会場のすべての観客が「ティモ、ティモ」と応援するように叫んでいた。「ありがとう」という感謝の声もあったけど、ぼくが感謝を言いたかったんだよ。すべてが特別な時間だった
偉大な卓球選手がもうすぐコートを去ろうとしている。ティモ・ボル、ドイツが生んだ不世出のスーパースター。2000年以降の世界の卓球界を華麗に駆け抜け、唯一無二のプレースタイルを確立させた。2024年夏のパリ五輪が最後の国際大会となり、2025年の春に終わるブンデスリーガでラケットを置く。その卓球人生を振り返り、ティモ・ボルは何を語るのか。
このインタビューは2025年12月に収録したものである。
卓球王国2025年2月号掲載 前編
<Photo ITTF>
さよなら、ティモ。キミを忘れない
彼らと離れるのは寂しいものだよ。感情が揺さぶられたね
インタビューの日、モニター越しに見るティモ・ボルはいつもと同じだった。今シーズンのブンデスリーガの終了をもって40年近い選手生活にピリオドを打つことを表明。欧州の皇帝と呼ばれ、彼にしかできない両ハンド攻撃で数々のタイトル、メダルを手にしたスーパースターがコートを去る日は近い。今の心境を語り、その卓球人生を振り返ってもらった。
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●ー最後の国際大会、パリ五輪はどうでしたか?
ボル いろいろな感情が湧いてきたね。ハイレベルな選手として20年以上もやってきて、チームメイトはぼくにとってはもうひとつの家族のようなものだった。今までともに生活、練習をしてきたし、彼らと離れるのは寂しいものだよ。感情が揺さぶられたね。その関係性を断ち切るのは難しい。
一方で、ストレスのある生活から開放された気分もあるね。遠征の多い生活から自分の家族と一緒に過ごす時間が増えるだろうし、その部分はハッピーだね。
●ー最後の大きなトーナメントがパリ五輪でしたね。
ボル モチベーションは高かった。1年以上、肩の故障で苦しんでいて、五輪出場の資格を得るために戦っていた。とてもタフだったけど、出場できて幸せだった。結局出場できたけど、故障は治りきっていなかった。でも、少しずつ良くなっていて、年は取ったけど気分もよく、五輪というターゲットに向かってモチベーションは高かった。
●ー最後のオリンピックということでナーバスになったり、感傷的にはならなかったのかな。
ボル 正直に言えば、オリンピックの準備をしている時も「これがナショナルチームとして最後の合宿なんだ」と感傷的にはなったよね。