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【潜入ルポDX】横浜隼人中学・高校 「日本一への部活道」〈前編〉

【潜入ルポDX】横浜隼人中学・高校 「日本一への部活道」〈前編〉

団体・個人の両方で全国タイトルを獲得するなど、高いレベルで活躍を続ける横浜隼人中学・高校女子卓球部。「全員自己新記録」を目標に青春の日々を送るチームに潜入した。

●取材:浅野敬純(卓球王国編集部)

【学校DATE】
●名称:学校法人大谷学園 横浜隼人中学・高校

(YOKOHAMA HAYATO Junior & Senior High School)
●住所:神奈川県横浜市瀬谷区阿久和南1ー3ー118
●創立:高校/1977年・中学/1979年
●学科(高校):普通科・国際語科
●女子卓球部部員数(10月10日現在)

【高校】3年4名・2年2名・1年3名【中学】3年4名・2年8名・1年6名

中学は団体春夏連覇、高校は2度の選抜準優勝。全国トップレベルの強豪校

 神奈川県横浜市の最西端・瀬谷区に校舎を構える横浜隼人中学・高校。1977年に高校が設立され、その2年後に中学も設立。開校当初は男子校であったが1985年に男女共学となり、現在は中学・高校合わせて約2000名の生徒が通う。

 女子卓球部は小学生時代に全日本カデットダブルスを制した中島未早希、藤田麻紀子らが2003年に入学し、2005年全中団体戦で準優勝。2006年には高校がインターハイ学校対抗初出場を果たした。

2005全中団体戦準優勝。横浜隼人として初の全国メダル獲得

2006インハイ学校対抗初出場。この年から2024年まで18大会連続出場

 2017年1月の全日本ジュニアで当時高校2年の笹尾明日香が横浜隼人に初の日本一をもたらすと、同年3月の中学選抜でも初優勝。高校もインターハイ学校対抗で8度ベスト8へ勝ち上がり、2023・24年度選抜では準優勝と、全国で活躍を続けている。

2017全日本、笹尾明日香、全日本ジュニアV。加藤美優、長﨑美柚らを破って頂点に立つ

2017中学選抜初制覇。「笹尾先輩に続け」と初の団体日本一

2024・25高校選抜2年連続準優勝。2024年3月の高校選抜で初の決勝進出。翌年も接戦を勝ち抜いて準優勝

 そして今年3月の中学選抜で2度目の栄冠に輝き、8月の全中団体戦では過去4度敗れていた決勝で勝利して悲願の初V。見事、春夏連覇を成し遂げた。

2026 9年ぶりの中学選抜V。6試合を戦い1点を落としたのみで2度目の優勝

全中団体戦初優勝。準々決勝から決勝まで3試合連続3ー2で勝利という劇的なV

 全日本社会人のタイトルも獲得した笹尾を筆頭に、卒業後も大学、社会人で活躍するOGも多数輩出。全国トップレベルの強豪校として知られている。

〈笹尾明日香〉(2017年度卒/現・日本生命)2017年全日本ジュニア優勝・2024年全日本社会人優勝・2025年全日本女子複優勝

〈永尾尭子〉(2013年度卒/現・デンソー)2017年全日本女子複優勝、2026年全日本社会人優勝

〈中島未早希〉(2008年度卒/元・サンリツ)2016年全日本女子複優勝

監督が語る「隼人の美学」

高校:岸昌宏監督。島根県出身。明誠高から早稲田大へ進学し、出版社勤務を経て2006年より横浜隼人中・高教員。2011年秋から高校監督を務める

中学:中間卓也監督。東京都出身。明大中野八王子高、早稲田大を卒業後、新卒で2014年から横浜隼人中・高に教員として赴任。2019年から中学監督

【選手も顧問も「全員で」が基本にある】

 横浜隼人は日産自動車でも監督を務めた小林秀行氏を外部コーチとして招き、本格的な強化がスタート。小林氏は2021年に亡くなるまで、総監督として長くチームの指導に携わった。

 現在は高校が岸昌宏監督、中学が中間卓也監督となっているが、「2人とも監督というより、顧問という意識が強い」(岸監督)とのこと。他にも大越時恵教諭、讓原和教諭と計4人の顧問がおり、全員で練習や強化の方針を決め、指導し、事務もこなす。ピラミッド的な役割分担もなく、4人で中学・高校全体を担当する。

 この「全員で」というのが横浜隼人のカラーのひとつでもある。中学1年生から高校3年生までが同じ練習場で、同じ目標に向かって、同じ時間を過ごす。準備や片付けなどの仕事も、学年や実力に関係なく全員で取り組む。そうやってチームとして強くなり、「全員自己新記録」を目指していく。

 また、12歳から18歳までの選手が、「一緒に考えて、一緒に取り組む」ことの意義を岸監督はこう語る。

 「中学1年生と高校3年生では、いろんな部分で大きな差があります。それだけ年齢差があったら、お互いに理解できないこと、わからないことがあって当然なんですよね。

 その中で、どうしたら相手に伝わるのかを考えたり、相手のことを理解しようとする経験ってすごく勉強になるはず。それも中・高一貫の大きなメリットだと思います」

岸監督とともに長く横浜隼人の教員として指導にあたる大越時恵教諭(右)。中学選抜初優勝時を含め、以前は中学監督を務めていた

【「すべてが成長の機会」。卓球以外も「部活」】

 そして、「部活」もひとつのテーマだが、横浜隼人においての「部活」は卓球だけではない。授業などの学校生活、日常生活も含めて「部活」であり、すべてに一生懸命取り組むことが成長につながると考える。

 「部活って、最近はネガティブな側面がフィーチャーされがちだけど、私自身、部活で得たものがたくさんあるし、良い側面を知っている。

 『授業も部活も全力で』っていうのはハードかもしれません。でも、日常のすべての時間が成長の機会だし、それらも含めての『部活』。そうした考え方が隼人のカラーになっています。

 今はプロ的な環境で活動できる中学・高校もあるし、いろいろな価値観、選択肢があって正解がわからない時代。だからこそ、自分たちのやり方に誇りを持つこと、信じることが大事だとは感じます」(岸監督)

 つねに全力、つねに成長。それが横浜隼人の「部活道」である。

【目指すのは選手に選ばれるチーム】

 今年度の横浜隼人は中学18名、高校9名で活動しており、多くの選手は地元・神奈川、東京出身で自宅から通学。福島、福井、大阪、宮崎など地方から入学した選手も数名おり、彼女たちは数年前に完成した寮で生活を送る。

 寮がなかった時代にも、地方出身の選手が入学することはあったが、その場合は保護者も神奈川へ引越して生活する必要があった。寮ができたことで地方から選手を迎え入れるハードルは低くなったものの、現在も選手の勧誘には力を入れていないという。

 「ウチはもともと寮もなかったし、冷暖房のない古い体育館で練習していたり、特別な環境や条件があるわけではない。それでも隼人のカラーに魅力を感じて、『ここでやりたい』と入学してくれた選手たちと戦っています。

 よく『部員数の枠は?』『入部にはどれくらいの実績が必要?』って聞かれるんですけど、それもありません。強い・弱いじゃなく、チームの方針を理解して、同じ志を持ってくれるのであれば一緒にやろうというスタンスです。こちらが選手を選ぶのではなく、選手に選ばれるチームであり続けたいですね」(岸監督)

練習場の壁には歴代OGなどの名前がズラリ

【全員の声で練習のムードを作る】

 平日は授業が始まる前に中学生は勉強、高校生は校内の掃除を行って1日がスタート。高校生は14時45分、中学生は15時45分から練習が始まるが、顧問への報告・連絡・相談、練習メニューの確認などは朝のホームルーム、昼休みに済ませ、体育館に着いたらすぐに集中して練習に入れるようにしておく。

 休日も体育館に到着する前にさまざまな確認は終わらせ、9時30分から練習を開始。土曜日は19時45分、日曜日は17時30分まで練習に励む。また、月に1回は校内で合宿を実施。これには強化だけでなく、寝食をともにすることで相互理解、チームワークを深める目的もある。

 横浜隼人には選手たちが作成した部則があり、練習中もルールに従って行動。そして「良い雰囲気で練習しなければ、練習の質は上がらない」と、体操から練習中まで、全員で声を出してムードを作っていく。

 「選手たちには集中とリラックスという意味ではなく、授業が終わって練習に入る時、練習メニューが変わる時など、場面が変わるタイミングで意識と行動をすばやく切り替える『メリハリ』を大事にしてほしい。それが『すべての時間で成長』につながると思います」(岸監督)

練習場となる体育館は授業でも使用するため、卓球台は毎日準備&撤収。冷暖房はなく、夏場は40度近くまで室温が上がることもあるという。また、校内合宿で宿泊する部屋も体育館内に設けられている

練習中は各コートから「ファイト~!」の掛け声と、それに答える「ハイ!」という声が響く

練習と実際の試合でのギャップをなくすため、普段から声を出すことを意識

ゲーム練習の合間も休憩するのでなく、各自で率先して課題練習に取り組む

●後編へ続く

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