団体・個人の両方で全国タイトルを獲得するなど、高いレベルで活躍を続ける横浜隼人中学・高校女子卓球部。「全員自己新記録」を目標に青春の日々を送るチームに潜入した。今回は、前編に続く後編です。
●取材:浅野敬純(卓球王国編集部)

意識するのは「不易流行」。隼人の強化方針
【課題解決へのアプローチはさまざま。プレーは「型にはめない」】
選手を指導するうえで、横浜隼人の指導陣が大切にするのが「型にはめない」こと。時期によってチーム全体で取り組む技術やテーマはあるものの、選手個々の課題については解決方法を提案し、それを取り入れるかどうかは選手に任せるスタイルだ。
「課題の解決方法はさまざまなので、選手に強制することはないです。型にはめたほうが勝ちやすいケースもありますが、プレースタイルには選手の主体性や意思があったほうがいいという考えです」(岸監督)
中学生と高校生が一緒に練習する環境でも、求めるレベルや要素は違ってくる。高校生は一般で戦うことを見据えて、より細かく、より複雑な技術・戦術を指導。中学生には結果だけでなく、卓球の楽しさを感じられるような指導も心がけているという。
また、中学から高校まで、さまざまなレベルの選手がいる中で、学年に関係なく、できるだけ同じレベルの選手と練習。それぞれのレベルに応じた取り組みで、「全員自己新記録」を目指す。
そして、高校生の大会前には中学生が練習相手を務め、中学生の大会前には高校生が練習相手を務めるなど、中学と高校の大会スケジュールに合わせて練習を組んでお互いにサポート。チームとして一体感を持たせて大会へ臨む。



【変わらないことと、変わっていくこと。指導陣が意識する「不易流行」】
4人の顧問の他、専任コーチとして阿部優月さん、フィジカルコーチの齊藤寛也さん、メンタルコーチの大久保明香さん、コンディショニングコーチの宮﨑未来さんもチームスタッフとして横浜隼人を支える。こうした多方面からのアプローチは5年ほど前から本格的に取り入れたそうで、遠征や対外試合も以前より増やしている。
こうした変化について、指導陣が意識しているのは松尾芭蕉の俳諧の理念でもある「不易流行」の精神。永遠に変わらない本質の中に、新たな変化を取り入れることであり、絶えず変化していく流行の中に、永久に変わらない不易の姿を見出すことでもある。
「(総監督の)小林さんが亡くなり、指導陣の中でチームの精神、カラーみたいなものは変えず、新しいことに取り組んでいこうという話になった。本格的にトレーニングを取り入れたし、練習メニューも変えました。バランスを判断しながらですが、変えるべきことはまだまだありますね。
トレーニングを取り入れて、スタッフが増えて思うのは、チームや選手と関わる人間が多くなれば、それだけ応援してくれる人が多くなるということ。いろいろな人がさまざまな形でチームに関わって、支えてくれてやっていけるのは、すごく良い状態だなと感じます」(岸監督)

フィジカルコーチの齊藤寛也さん。日本リーグ・サンリツのマッサーも務める


取材日はトレーニングデイ。練習の最後にさまざまなメニューを行う
選手に聞いてみました!
選手たちに学校のこと、卓球のこと、先生のこと、将来のこと、いろいろ聞いてみました!

【チームの長女たち! 高3★カルテット】

左から五十嵐のぞみ、平松在璃伽、岩木優芽、佐藤里楠
■五十嵐のぞみ(神奈川出身)
隼人は礼儀がしっかりしていて、そこに魅力を感じました。6年間で一番印象に残っているのは最後のインターハイ予選。星槎横浜に負けてしまいましたが、卒業した先輩方や中学の保護者の方も応援に来てくれて、県大会と思えないくらいの声援の中で戦うことができました。将来の夢は…専業主婦です(笑)。
■平松在璃伽(東京出身)
小学生の時に隼人を見学させてもらって、雰囲気の良さが印象的でした。先輩・後輩も仲が良くて楽しいです。将来はスポーツ選手の栄養指導をできる管理栄養士になりたい。あとは尊敬する桧山(夏望/2024年度卒・東洋大)先輩のような人間になりたいです。
■岩木優芽(神奈川出身)
姉(仁香/2024年度卒・日本体育大)も隼人に通っていて、「練習は長いけど、みんなで頑張れる」と聞いて進学を決めました。正直、隼人ではなかなか試合に出て貢献することができなかったので、大学ではそのぶんも頑張りたいです。
■佐藤里楠(福島出身)
中学までは地元で、高校から隼人に入りました。高校生だった兄や姉の試合を見に行った時に、隼人の応援を見て「ここに入りたい」と思ったのがキッカケです。最後のインターハイ予選は、本当に何カ月も前からみんなで「学校対抗出場」を目指してやってきて、負けてしまったけど最後まで隼人らしく戦えました。
【祝・春夏連覇! 中3★カルテット】

左上から時計回りに馬場菜々美、宮田柚、岡田希泉、米山茉緒
■馬場菜々美(神奈川出身)
中学選抜の優勝は実感があるんですけど、全中はホントに優勝したのかってくらい、いまだに全然実感がないです(笑)。小学生の時はクラブで1人でやっていたので団体戦に憧れていて、隼人で日本一になりたくて入学したのでうれしかったです。隼人に入って、仲間もできて人間的に成長できたと思います。
■宮田柚(宮崎出身)
五十嵐先輩に憧れて隼人に進学を決めました。厳しいこともあるけど、みんな明るいので、それに引っ張られて私も性格が明るくなった気がします。この明るさがあったから中学選抜でも全中でも優勝できたんじゃないかと思います。
■岡田希泉(神奈川出身)
同じクラブ出身で、強くて優しくて憧れの五十嵐先輩が通っていて、一緒に頑張りたいと思って隼人を選びました。入学してからは充実しすぎて、あっという間に3年経ちました。岸先生も中間先生も熱くて、生徒思いの先生です。
■米山茉緒(神奈川出身)
中間先生はジョークを言ったり、いつもおもしろい先生です。岸先生も技術、戦術を細かく教えてくれます。中学選抜も全中も私は試合に出られなかったんですけど、同期3人が頑張って、優勝してくれてうれしかったです。先輩や同期に負けないよう、高校でも頑張ります!
まとめ:揺るがぬ隼人の信念と誇り。チームで勝ち獲った春夏連覇
「チームで成長する」「日常のすべてを成長に」という横浜隼人のカラーについて、岸監督は「古いというか、今風ではないかもしれない」とも話す。
ただ、そのカラーを貫いて中学は選抜・全中連覇を果たした。優勝メンバーのうち、全中シングルスでベスト16に入ったのは1人のみで、小学生時代にさかのぼっても、全日本ホープス・カブ・バンビの部でランク入り(ベスト8以上)経験があるのも1人だけ。まさにチームで成長して、チームで勝ち獲った春夏連覇だった。
正解のない時代にも揺るがない信念と誇りを胸に、彼女たちは横浜隼人としての「部活道」を歩いていく。


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