卓球王国2026年12月号 GLOBAL ACES「なぜ彼らは戦い続けるのか」
SHIN Yubin KOREA R 申裕斌[韓国]
シン・ユビン
2004年7月5日生まれ、韓国・水原市出身。2023年世界選手権では女子ダブルスで銀メダルを獲得。24年パリ五輪では混合ダブルスと女子団体で銅メダルを獲得した。26年アジア競技大会では2個のメダルを獲得。世界ランキング12位(10月14日現在)
ライバル・張本美和が明かす「最も苦しい相手」。申裕斌の変わらない温かな眼差しと、見据える未来
パリ五輪で2個のメダルを獲得し、名実ともに韓国のトップスターとなった申裕斌。数々の快挙を経て、次なる頂を見据える韓国卓球界のエースだ。過密な日程を戦い抜くメンタリティと進化の過程、そしてライバル・張本美和のコメントから彼女の実像に迫る。
国際大会で激闘を繰り広げる日本の張本美和(世界ランキング3位)にとって、申裕斌は常に特別な存在だ。2026年8月に行われた「WTT横浜」の準々決勝で申裕斌を破った張本は、試合後に強い敬意と恐怖心を隠さずにこう語っている。
張本美和 「何回対戦しても、自分にとってはやっぱり『やりたくない選手』のトップです。対戦が決まった時から試合が終わる最後の1球まで、自分の中で一番苦しい気持ちになります。試合をしていると、メンタルが本当に強い選手だなと肌で感じます。だからこそ技術や戦術以前に『気持ちの面で絶対に負けない』という準備をして臨んでいます。申裕斌選手はすごく賢くて、私が得点したパターンでもすぐに対応してくる。彼女とやっている時は、常に頭をフル回転させています。フォアハンドもミスがなく堅いうえ、身長が高く手足も長いため、安易にフォアへ回すとすべて待たれている感覚になる。本当に手強い相手です」
世界のトップでしのぎを削るライバルに「最も苦しい相手」と言わしめる申裕斌。パリ五輪から折り返し地点となるこの期間、彼女自身はどのような想いで歩みを進めてきたのだろうか。
●─パリ五輪が終わってからこれまでを振り返って、どのような期間でしたか?
申裕斌「本当にいろんな試合を経験して、いっぱい成長できたと思います。でも、ここで止まるつもりはありません。これからも一つひとつの試合を大切にしながら、一生懸命頑張っていきたいです」
進化を支える「自然体の強さ」「美味しいご飯をいっぱい食べて、しっかりリフレッシュすること」
●─WTTをはじめ、アジア競技大会などハードな日程が続いています。フィジカルやメンタルのコンディションはどのようにコントロールしているのですか?
申裕斌「美味しいご飯をいっぱい食べて(笑)、いっぱい寝て、しっかりリフレッシュすることですね。どうすれば自分を幸せにできるかを考えながらコンディションを管理しています」
●─パリ五輪後のインタビューでも「いっぱい食べる」とおっしゃっていましたよ(笑)。
申裕斌「あ、本当ですか? 2年間変わっていないみたいですね(笑)」
コート上での鋭い洞察力や粘り強いメンタルとは裏腹に、素顔の申裕斌は非常に自然体で温かな人柄を持つ。彼女が継続して行っている奉仕活動(ボランティア)についても尋ねた。
●─以前お聞きしたボランティア活動は、今も続けていますか?
申裕斌「はい。7月5日が私の誕生日だったのですが、その記念として保護犬のボランティア活動に行ってきました。ご飯をあげたり、お散歩をしたり、施設の片付けをしたり、いろいろなことをしてきました」
コートではライバルたちに絶え間ない圧力を与え続ける一方で、プライベートでは自分を慈しみ、周囲や動物たちへ温かな視線を注ぐ。その心のしなやかさこそが、激しい戦いの中でのブレないメンタルの源泉なのかもしれない。
●─次のオリンピックに向けて、これからどのような2年間を過ごしていきたいですか?
申裕斌「次のオリンピックはまだ先のことなので、まずは目の前にある一つひとつの試合に集中して、全力で頑張っていきたいです」
申裕斌は中学卒業後、プロ選手としてのキャリアをスタートさせた。ジュニア時代から韓国のエースとして重圧を背負い、2024年に地元で開催された世界選手権の直後には、不当なバッシングを受けて精神的に落ち込んでしまった時期もあったと、韓国女子の呉光憲監督(当時)も明かしていた。
しかし、パリ五輪後に「五輪メダリスト」「スター選手」ともてはやされても、彼女が驕ることは一切ない。
プロになって初めて得た給料で児童福祉施設に運動靴を寄付したり、大会で獲得したメダルの報奨金を児童養護施設や病院へ寄付。さらに五輪後のCM出演料を韓国小学校卓球連盟に寄付したことも報じられている。
コート上での闘志あふれるプレーと、コート外で見せる愛くるしい素顔。インタビューで見せる爽やかで毅然とした佇まい─。卓球選手として、そしてひとりの人間として、申裕斌は自らの信じる道を邁進し、その姿に多くの人々が魅了され続けている。
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